東伏見稲荷神社

滝島 俊

 朱の大鳥居が迎えてくれる東伏見稲荷神社は、地元では「お稲荷さん」と呼ばれる西東京市のパワースポットの一つです。昭和初期に創建された比較的新しい神社ですが、その存在はとても大きなものになっているのです。 

 東伏見稲荷神社は、明治維新後東京が首都となり、関東地方の稲荷信仰者たちが東京にも参拝できる京都伏見稲荷大社の分霊社をとの希望により創建されたものです。この勧請にあたっては、旧西武鉄道が土地7,000坪を無償貸与し、建立にかかる費用のうち3万円(当時)を提供しました。東伏見稲荷神社は1929年(昭和4)年に落慶し、同時に「上保谷駅」は「東伏見駅」に改称されました。当時は関東域の参拝客で賑わったそうです。名前の由来は文字通り、伏見稲荷大社の東(東京)に位置することから名付けられ、地元に親しまれたことから、1966年(昭和41)には住居表示変更に伴い、一帯の地名も“東伏見”となりました。お稲荷さんあっての東伏見なのです。東伏見駅の南口に降り立ったら、線路沿いにある一の鳥居をくぐって進みます。途中の二の鳥居を経て東伏見稲荷神社に向います。

東伏見稲荷神社の祭神ですが、

  • 宇迦御魂大神(うがのみたまのおおかみ)/衣食住の大祖神・農業の守護神
  • 佐田彦大神(さだひこのおおかみ)/海陸の道路を守り、人々の行うことを良い方向に導く神
  • 大宮能売大神(おおみやのめのおおかみ)/歌舞音曲方向に信仰の篤い神様。長寿、愛嬌の神様

の御三座で、これらを東伏見稲荷大神と総称しています。このご祭神だけでも多くの御利益がありそうですが、「新東京百景」の一つに数えられる朱色の拝殿にお参りしたら、裏側にある“お塚”を巡りましょう。京都の伏見稲荷大社の稲荷山を模してつくられたお塚には、稲荷祠16社と祖霊社併せて18の境内社と100を超える朱色の鳥居のトンネルがあり、それぞれには「商売繁盛」「方針決定」「勧善懲悪」「縁結び」「長寿の守護神」「歌舞音曲・演芸」「福徳円満」「家庭和合」・・・などの御神徳があり、全てを巡るとご利益があるとされます。迷路のような不思議な空間ですが、大小さまざまな狐や狛犬を眺めながら歩くのもまた楽しいです。多くの福を授けていただける東伏見稲荷神社ですが、御朱印の他に、願いを成就させるお守りの「夢結び」や、道中の安全を祈願する「自転車守り」などが人気です。

100を超える朱色の鳥居のトンネル

 また東伏見稲荷神社は、現在整備が進む都立東伏見公園の中心であり、新春の初詣、初午祭、節分祭、春季・秋季の大祭など、季節のお祭りも行われ、地元のみならず近隣の多くの人々の信仰を集めています。
鳥居と狐に導かれて、東伏見稲荷神社を訪ねてみませんか。

住 所 〒202-0021 東京都西東京市東伏見1丁目5−38
時 間6:30〜17:00
HPhttp://www.higashifushimi-inari.jp/

※掲載の情報は取材当時のものです。最新の情報は各公式ホームページ等でご確認ください。
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著者
滝島 俊
郷土史研究家
旧保谷市出身(射手座)。以前は光学機器メーカーのエンジニア。下野谷遺跡のマスコットキャラクター「しーた と のーや」のデザインを手がけ、地元に目を向けるように。現地に足を運び資料文献の両面からデータを積み上げる、根っからの研究者。趣味はカメラとものづくり。土地の歴史や遺構などに興味を抱くマニアックな一市民である。最近ではまち歩きのイベント等でも講師として活躍している。
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